ある人は、あふれる喜びに心満たすだろう。
ある人は、呆然と涙をおとすだろう。
失ったものをかみしめて。
今あるものをかみしめて。
窓をあけると、朝の景色が、目の前にひろがる。
山裾ののどかな土地、忙しなく動き始める街並み、緑陰に染まる道、凪いだ海、堂々たる山並み、花々に彩られる庭。
それぞれの窓から、見える景色はちがう。
そして、ひとりひとりがたいせつに想う場所があり、誰にも生きる場所がある。
その多様な肯定を、荒井良二が生き生きと描いた。
本という枠から、溢れだしそうな色、色、色。
視界をうめつくすほどに込められた作者の想いが、読み手に届く。
力強さと静謐さに、満ちている。
朝が来て、窓をあけたら、どんな空であってもそれは、自分が新しくはじめる朝。
雨模様なら、とっておきの傘を用意して。
灰色の雲が待っていたら、憂いをひとつ手放して、遠く運んでもらう。
青く澄んでいるのを見たら、深呼吸をひとつ。
身体と心をゆるめて、今日の一歩をふみだす。
「あさになったので
まどをあけますよ」
その窓のむこうには、新しい朝のどんな景色が、広がっているだろう。
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