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書籍名 半日村 
出版社 岩崎書店
著者 斎藤隆介/作 滝平二郎/絵
出版年 1980年
定価 1,500円+税

あ ら す じ

 創作昔話の名手、斎藤隆介さんが描く子どもは
芯が強く、いつもひたむきです。

 この作者と画家がコンビを組んだ中で、
最も有名なものといえば、『モチモチの木』。
 夜中にひとりで小便にも行けないようなまめ太が、
病に倒れた祖父を医者に診てもらおうと、暗い森を
たったひとりで駆け抜けるのですが、
『半日村』にも、そんな芯の強い、ひたむきな少年が登場します。

 舞台は、高くそびえる山のふもとで暮らす、
半日しか日のあたらない村でのおはなし。
 半日しか日が当たらないので、人も花も動物も、
みんなが寒さに震えながらくらす日々。
イネの育ちは悪く、よその村の半分の収穫しかない。
だから、村人はみんなやせて青白く、元気がなかった。
 そんな村に暮らす少年一平は、ある晩、両親の会話を偶然聞いてしまう。

「あァあ、おらたちの村は、なんという村かのう。
あの山さえ なかったらのう」
「だめさ、山は山さ。うごかせやしねえ。
わるい村に うまれたとおもって、あきらめるより しかたがねえさ」

 一平は次の朝、袋をかついで山に登り、てっぺんの土を取ってくると
ふもとの湖に土をあけた。
何度もそれを繰り返す一平を、人々は笑ったが、
一平はただ、こう言うだけだった。

「おらは、あの山を みずうみに うめちまおうと おもってるんだ」

 ひたむきな姿は、やがて人々の心を動かした。
子どもが3にん4にんと、袋をかつぎだし、
大人ももっこを持ち出し、山を登るようになった。
何年も何十年もそれを続けるうち、
やがて山は低くなり、
日の光がニワトリの鳴き声と一緒に顔をだすようになった−。

 自分を信じ、やり遂げたときの喜びが、
ラストシーンのさんさんと照り輝く朝日とかさなって、
感動的な読後感が残ります。
 滝平二郎さんの見事な人物表現、味わい深い表情にも、是非ご注目ください。



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